Categories
美術館・博物館・図書館

千總ギャラリー

こんにちは、お会いできて光栄です。当サイトのコンセプトはこちらをご覧ください。

京都市内でも特にお洒落な店が立ち並ぶ四条烏丸・烏丸御池エリア。
そんな落ち着いた街並みの中に、友禅染の老舗・千總(ちそう)本店があります。
ショーウィンドウには美しい京友禅の着物が飾られており、外から眺めていても十分癒されますが、おすすめは店内です。可愛い小物も購入できますし「千總ギャラリー」では展覧会が開催されています。

目次

千總の歴史

創業1555年!

友禅×日本画のコラボ、近代日本画家との深いつながり

千總ギャラリーの特徴

約2万点の貴重なコレクションを無料公開

円山応挙の絶筆「保津川図」を所蔵

他の美術館にとって重要なコレクション

千總ギャラリーの開館時間・アクセス

参考文献・WEBサイト

千總の歴史

創業1555年!

千總の創業は1555年。法衣装束商として今の本社がある場所で始まりました。1555年というと、武田信玄と上杉謙信が川中島の戦いを繰り広げていた年です。
江戸時代は御装束師として有職故実に基づいた衣服や打敷を寺社・公家・武家に調進していました。

友禅×日本画のコラボ、近代日本画家との深いつながり

明治時代の下絵を復刻した敷物(千總本店で購入)
明治時代の下絵を復刻した敷物、千總本店で購入

大きな転機となったのは明治時代。千總に限らず、全国のあらゆる職人が変革を迫られました。
この急激な時代の転換期、千總は主力商品を友禅染に置き換えて、デザインの下絵を日本画家に依頼したのです。
その結果、パリ万国博覧会(1900年)をはじめとする数々の博覧会で受賞。商いが世界にまで拡大しました。

実は下絵の仕事は画家たちにとっても助け舟でした。
絵の顧客だった武士の終焉、公家は東京遷都で京都を去り、さらに廃仏毀釈で寺院は衰退…。
仕事を失った画家たちはピンチに陥っていたのです。

千總が岸竹堂、今尾景年、幸野楳嶺など京都在住の画家に下絵を依頼したことは、京都近代画壇の存続にとって多大な貢献だったと言えます。

千總ギャラリーの特徴

約2万点の貴重なコレクションを無料公開

絵師(画家)と交流する中で蓄積されたコレクションは約2万点。
その中には重要文化財も含まれており、近世・近代日本画の代表的な作品が所蔵されています。屏風や掛け軸の他、友禅染の下絵、着物、工芸品など多種多様です。

千總文化研究所のwebサイトでコレクションの一部を見ることができます。

千總文化研究所

【代表的な作品】
・「写生図巻 甲巻および乙巻」(円山応挙)重要文化財
・「猪図」(森狙仙)
・「孔雀図」(岸駒)重要文化財
・「水辺群鶴図」(吉村孝敬)など

特に私が千總ギャラリーの特徴だと思うのが、友禅染の下絵とそのデザインで制作された着物が並んで展示されること。平面の下絵が立体的な着物に変化する様子は面白いです。
なかなか一般の美術館では下絵と着物が並列して展示される機会が少なく、友禅染のお店ならではの粋な展示方法だと思います。

円山応挙の絶筆「保津川図」を所蔵

「保津川図」 千總文化研究所・近世絵画コレクション

私が初めて「保津川図」屏風を見たのは、2017年の千總ギャラリーでした。
作品を保護するために滅多に展示されないのですが、偶然見ることができたのです。
さらに幸運なことに、ギャラリーには私一人だけ、貸し切り状態。
屏風の前にあった椅子に座り、飽きることなくずっと眺めていました。今でもその時の事を思い出すと幸せな気分になります。

「保津川図」は円山応挙の最後の作品で、亡くなる1カ月前に描かれました。
保津川は、嵐山の名物・保津川下りの川です。川下りの舟に乗った方はご存じだと思いますが、保津川は大きな岩がゴロゴロあり、白波が立つほどの急流です。
特に雨上がりの水位が高い時は濁流の暴れ川になります。(実は以前、通勤電車から保津川を毎日眺めていました)

この作品はそんな荒々しい姿の保津川ではないかと個人的に感じています。非常にエネルギーに満ち溢れた力強い作風です。
円山応挙は保津川上流の亀岡出身で、幼少期に山谷を越えて京都に来ました。
絵師になる出発点・保津川を最晩年の題材に選んだ点に、応挙の強い想いを感じる名作です。

他の美術館にとって重要なコレクション

千總のコレクションは他の美術館にも時々貸出されています。
例えば京都国立近代美術館の「円山応挙から近代京都画壇へ」(2019年)では10点以上も展示されていました。
このように美術館の展覧会においても重要な作品が、千總ギャラリーでは無料で見ることができるのです。千總さん、ありがとうございます。
皆様も京都に来られた際はぜひ千總本店へお立ち寄りください。

千總ギャラリーの開館時間・アクセス

ギャラリーが公開されるのは展覧会の期間中のみです。
開館時間も展覧会によって異なりますので、ギャラリーにお越しの際は必ず千總ギャラリーのWEBサイトをご確認ください。

千總ギャラリーのWEBサイト

https://www.chiso.co.jp/honten/gallery/

アクセス

〒604-8166 京都市中京区三条通烏丸西入御倉町80番地
・地下鉄「烏丸御池」駅から徒歩3 分
・阪急「烏丸」駅から徒歩7 分

参考文献・WEBサイト

●千總 https://www.chiso.co.jp/
●千總文化研究所 https://icac.or.jp/public/
●「円山応挙から近代京都画壇へ」
求龍堂、2019年発行 ISBN:9784763019189